翻訳者と翻訳家
翻訳者と翻訳家の違いについて考えてみます。
翻訳者と翻訳家、英語ではともにtranslatorと訳されますが、どのように使い分けられるのでしょうか?
一般的に、ビジネスシーンで使用する文書の翻訳(実務翻訳、産業翻訳、ビジネス翻訳などと呼ばれます)に携わる人は翻訳者と呼ばれ、映画の字幕の翻訳(字幕翻訳、映像翻訳)や、本などの出版物の翻訳(出版翻訳、文芸翻訳)に携わる人は翻訳家と呼ばれる傾向があるようです。
翻訳家といえば、作家・画家・音楽家などのように芸術家を連想させ、芸術的な職業をイメージされる方も多いのでしょう。
また、翻訳を生業としている人、つまりプロの場合は翻訳家、それ以外の人、つまりアマチュアの場合は翻訳者という考え方もあるようです。
「家」という言葉の意味は、広辞苑によると、「その道の人。また、その道にすぐれた人。」とあります。
「その道の人」とは専門家、つまりプロのことですから、プロの場合は翻訳家、そうでなければ翻訳者という区別もできそうですが、広辞苑によると、「者」という言葉にも「その道になれた者。くろうと。」という意味があります。
「くろうと(玄人)」も同様に専門家、つまりプロであることを意味していますので、アマチュアの場合は翻訳者という考え方は難しいかもしれません。
実際には翻訳者と翻訳家は特に区別することなく使用されることが多く、プロとして翻訳の仕事をされている方でも翻訳者と翻訳家どちらも使用されている方がいます。
単純に、語呂や響きがいい方を選ぶというのもあるかもしれません。翻訳者と翻訳家は、どちらも言葉としては不自然ではありませんが、例えば、投資家は投資者とはいいませんし、経営者を経営家というのもあまり聞きません。
弊社では、映画や本の翻訳ではなく実務翻訳を中心にしており、また翻訳家というとごく一部の高名な方をイメージしてしまうこともあり、基本的に翻訳者という言葉を使用しています(プロとアマを区別するためにプロ翻訳者という言葉を使用することもあります)。