翻訳作業の進め方
お客様から翻訳依頼があった原稿を受け取ってから翻訳が完了するまでの作業手順を、英文和訳(英語→日本語)を例にとってご紹介します。ここでは弊社の主任翻訳者を例にとって実際の訳し方をご紹介しますが、もちろん、翻訳者によってそれぞれ独自のスタイルを持っており訳し方は様々です。また、翻訳会社によっては翻訳作業の進め方に関してガイドラインを設定している会社もあるかと思います。
以下にご紹介するのはあくまで翻訳者の作業のみであり、翻訳作業に入る前の翻訳会社内でのやり取りや翻訳後のチェックなどは含みません。
1. 翻訳前段階(原稿読み込み)
実際に翻訳作業を開始する前に、まずは顧客から頂いた英文原稿に目を通します。この段階では、日本語の訳文を考えることなく英語の原文を読み進めていき、内容を理解することに注力します。内容を把握すると同時に、翻訳完了までの大まかなスケジュールを設定します(1日あたり大体何ページ訳すとか)。
全体の流れを把握するために原稿全てに目を通すのが基本ですが、原稿の量が多くて読み込みに時間がかかりそうな場合はいくつかに分割する場合もあります。
2. 第1段階(下訳)
原稿を読み込んだ後に定めたスケジュールに従って、通常は頭から翻訳作業を開始していきます。この段階では日本語の表現にあまりこだわったり厳密に訳したりするようなことはせず、スケジュール通りに翻訳作業が進むよう、翻訳のリズムを大事にします。ただ、下訳とはいってもなんとか実務で使える程度(意味が分かる程度)には訳します。
当初定めたスケジュールに従って翻訳作業を進めていきますが、作業が捗る時は1日あたり多くの量を処理することもあり、逆に作業が捗らない時(体調が優れない時や他の案件に時間を取られている時など)は翻訳作業を進めずに休むこともあります。
3. 第2段階(本訳)
一通り下訳が終わったら、もう一度頭から、今度はじっくりと翻訳作業を進めていきます。この段階では、完成品を作る目的で翻訳作業を進めていきますので、原文で分かりづらい箇所があればネットなどを使って徹底的に調査しますし、自分で調べても分からない箇所や誤記と思われる箇所などがあれば原稿の作成者に問い合わせることもします。また日本語の表現にも気を使います。適切な言葉が見つからなかったのでここでは本番の翻訳という意味で本訳という言葉を使用していますが、下訳に対比して上訳という言葉も使用されているようです。
4. 最終段階(推敲)
2回目の翻訳作業が終了したら、最後は推敲の段階となります。ここでは、訳し終わった日本語の文章(訳文)を頭から読み、日本語の表現を読みやすくしたり読んでいて不自然な部分があったりすれば直します。また、日本語を読んでいて意味が通らない部分があれば、再度英語の原文と突き合わせて確認します。
推敲の段階が終われば翻訳作業は終了ですが、納期までに余裕があれば時間をおいて再度訳し終わった文を見直すこともしますし、また原稿の難易度が高い場合やいまいち自信が持てない箇所がある場合などは、原文と訳文を突き合わせてチェックする作業を何度も繰り返すこともあります。
翻訳作業にかける時間は翻訳前段階(原稿読み込み)+第1段階(下訳)にかける時間よりも第2段階(本訳)+最終段階(推敲)にかける時間の方が長く、第2段階と最終段階を合わせて翻訳作業全体の少なくとも5割から7割を占める場合が多いです。
翻訳作業に加えレイアウトが必要になってくる案件もありますが、上記ではレイアウト作業は除きました。レイアウト作業が必要な場合、通常は訳しながら大まかなレイアウトを行っていき、最後に細かく調整していきます。